シンクロニシティという言葉をご存知でしょうか。
シンクロニシティとは、「意味のある偶然の一致」のことです。
偶然というからには、因果関係もなく布石や予兆などもいっさいありません。
なんの関連もないところから、ひょっこりと起こるありえない偶然の出来事です。
話題になった「君の膵臓をたべたい」という作品では、次のような印象的なセリフがあります。
「違うよ、偶然じゃない。〜運命でもない。君が今までしてきた選択と、私が今までしてきた選択が、私達を会わせたの。私達は、自分の意志で出会ったんだよ」。
主人公との出会いについて、桜良が言った言葉です。シンクロニシティを感じさせますね。
今回はそんなシンクロニシティについて、初めてその概念を提唱したユングと、シンクロニシティについて複数の本を世に送り出している考古学者のフランク・ジョセフの分類を通して解説していきます。
シンクロニシティとは|よくある事例
シンクロニシティとは、精神分析医であり心理学者でもあるユングが提唱した概念です。
ユングは、人間には個人的な意識や無意識の他に、集団的無意識という人類共通の意識があるとしました。
シンクロニシティは、個々人の選択の数々が集団的無意識下で作用し、あるときまったく関連のない(ように見える)事象がつながり偶然の出来事に思えるというものです。
たとえばこんな事例があります。
- 遅刻するかと思ったが、家を出てから一度も信号で引っかからずに目的地に到着して間に合った
- ほしいと思っていた高価なスマホが、ショッピングモールで引いたくじ引きで当たった
- たまたまその日有給を取って休んでいたおかげで、大規模な地下鉄事故に巻き込まれずに済んだ(これ、私です)
- かねてからオーストラリアに旅行したいと思っていたが、夏休みに友人の家族旅行でどうしても都合がつかず欠員が出たのでと誘ってもらったら、その行先がなんとオーストラリアだった
- 今月はもうお金がない、どうしよう! と思っていたら、忘れていた保険の配当金があり、無事に過ごすことができた
などなど、探せばこのようなレベルのものはたくさんあると思います。
シンクロニシティとは、ちょっとした日常のラッキー! と思うようなことから、普通ではありえないようなことことまで、大小様々です。
ですが、共通しているのは、「そうなろうと意識していたわけではないのに、突然起こる」ということです。
意味のある偶然の一致、それがシンクロニシティです。
シンクロニシティとは|ユングの分類
では、提唱者「ユング」が行った、シンクロニシティの分類をご紹介しましょう。
分類を紹介する前に、ユングが定義づけたシンクロニシティについてご紹介しておく必要があります。
シンクロニシティとは、体験者あるいは目撃者にとって重要な意味を持つ偶然の出来事で、それによって一種の覚醒や悟りに近い感覚が得られるもの
悟りというとやや大げさに聞こえますが、何かの物事が起きた時、頭の中で回路が突然つながり、「そのことについてはすでに了解している」というような漠然とした経験というと分かりやすいかもしれません。
ユングは自分の患者が治癒の過程で良い方に向かう時、シンクロが起きやすいとしています。
「治癒段階で患者があることをきっかけに、良方に向かっていった」と述べている事を見ても明らかです。
つまり、シンクロニシティは、集合的無意識ではすでに了解している点と点が結ばれるひとつのシステムと言い換えることができます。
精神分析医かつ心理学者であるユングが分類したのは、次の3つです。
- 内面と外界での事象の一致
- 遠隔的な事象の一致
- 予知としか思えないような一致
ユングは「すべての人は集団的無意識を共有している」という立場から分類しているので、おのずと「心」と事象についての分類の仕方になっています。
1.内面と外界での事象の一致
ある人の話をしていたら、偶然その人が通りかかったということを経験したことはありませんか?
このように、内面で起きていることと外界での事象が、同じ時間に因果関係なく同時に起こることです。
ポイントとなるのは、「同時刻」ということです。
2.遠隔的な事象の一致
これは、いわゆる「虫の知らせ」ようなもので、ある日祖母と楽しく過ごしている夢を見たと思ったら、翌日祖母の急逝の知らせが来たなどというのもそのひとつです。
祖母とは同時刻に同じ場所にはいないけれど、祖母に関することが内面で意識され、あとで実際に祖母の身に変化があったことが分かっていますよね。
ポイントは「その場では同時かどうか確かめられないが、あとから分かる」ということです。
心的世界と同時に、それに対応したことが物理的世界で起こるけれど、その場では知覚的に確かめることが不可能で、後から符合していたと確かめることができる事を言います。
3.予知としか思えないような一致
ある心的世界に対応したことで、今はまだ起こっていないことがあとから物理的世界で起こることです。
予知夢などのように、未来のことがなんとなく分かってしまうと言うと分かりやすいでしょうか。
ポイントは、これも「時間的に離れている」ということです。
ユングはシンクロニシティを、「時間」「場所」そして「心的世界」の3つに分類したのです。
シンクロニシティとは|フランク・ジョセフの分類
考古学者のフランク・ジョセフは、ふとしたことからシンクロニシティを体験して興味を持ち、自ら「シンクロニシティ日記」をつけただけでなく、800人にも及ぶアンケートの結果から、17の分類にまとめています。
1.物品
人工自然・有機無機にかかわらず、物体に関連して起こる事象のことです。ほしかった物が偶然手に入るなどは、多くの人が経験していることでしょう。
2.数字
同じ数字が羅列していたり、同じ配列の数字を繰り返し見ることです。
これはエンジェルナンバーにも通ずることですね。
エンジェルナンバーは、同じ数字の羅列に意味を見出し、メッセージと捉える手法です。詳しくはこちらをお読みください。
エンジェルナンバーって何? ゾロ目を見るのは幸福のサイン
3.環境および動物に関する前兆
環境や、それ以外の人間と関連のある天文や地質・生物などあらゆる事象に対するなんらかの前兆のことです。
たとえば自然災害などの予兆として、カラスが集団で鳴き続ける、星座の位置に変化があるなどを指します。
4.予兆
まだ起きていない、未来のことについて事前に分かってしまうことを言います。いわゆる「虫の知らせ」です。
5.夢
予知夢や警告夢など、未来のことについて夢が知らせるようなことを指します。
個人的なことだけでなく、他人と全く同じ夢を見ることもあります。
6.導き
なにかに迷っている時、判断できない時に、一気に決心がつくような出来事が起こることです。
同じようなメッセージを、全く違う媒体で繰り返し見るなどが良い例です。
7.テレパシー
言語やジェスチャー以外の方法を浸かったコミュニケーションを意味します。
といっても、詳しい研究報告までは残念ながら分からないので、その信憑性は明らかではありません。
詳しく知りたい方は、フランク・ジョセフ氏の書籍をお読みくださいね。
8.パラレル・ライフ
2人以上の人間が別々の人生を歩む過程で、何回か接点を持つことです。ドラマなどではよくある設定ですね。
実際にも、知り合った男女が偶然旅行先で再会したり、その後も同じ店や同じ電車の車内で会うなどの事例が報告されています。
9.ルーツ
インターネットで知り合った人同士が、実は幼い頃生き別れた双子の兄弟だったり、偶然飲み屋で隣り合った人が同郷で同じ生年月日だったりという、ルーツにまつわるシンクロニシティのことです。
10.芸術
絵画や彫刻、音楽、文学などの芸術が、重要な要素となって起こるシンクロニシティのことです。
たとえば竹久夢二の代表作「黒船」という絵画です。一時はお金で売られそうになりましたが、縁あって夢二の第2の故郷である榛名湖近くの「竹久夢二伊香保記念館」に寄贈されたのは有名なエピソードです。
11.警告
ある人が危険な状態にある時や、なにかトラブルに巻き込まれそうな時に回避するように起こるシンクロニシティです。
12.死
予兆と似ていますが、これは「人の死」に直接関わるものです。音信不通だった人から急に連絡があり、会う予定になっていたのに直前に事故で亡くなったなど。
13.救済
本当に困り果てた時、降って湧いたように切り抜けられる方法がやってくることです。
14.生まれ変わり
輪廻転生の概念のことです。人間の魂は何度も生まれ変わり、そのたびに霊格が上がるという考えです。
輪廻転生までシンクロニシティに含まれるのですね。
15.モイラ
モイラとは、ギリシャ語の「天職」のこと。偶然の出来事から自分の天職に就くことができることです。
16.謎
謎全般は、シンクロニシティのひとつの要素であるということです。
17.人生を変えるような大きな出来事
人生を一変してしまうような、大きな出来事のことです。人生の分岐点や転機、ターニングポイントとも呼ばれ、その時に起こる出来事は人生に大きな意味を持って現れます。
ユング、フランク・ジョセフ分類に見るシンクロニシティのまとめ
シンクロニシティの意味を、ユングとフランク・ジョセフの分類を通して説明しました。
双方とも分類の仕方は違いますが、大まかな意味はやはり似ています。
ユングの分類
- 内面と外界での事象の一致
- 遠隔的な事象の一致
- 予知としか思えないような一致
フランク・ジョセフの分類
- 物品
- 数字
- 環境及び動物に関する前兆
- 予兆
- 夢
- 導き
- テレパシー
- パラレル・ライフ
- ルーツ
- 芸術
- 警告
- 死
- 救済
- 生まれ変わり
- モイラ
- 謎
- 人生を変えるような大きな出来事
シンクロニシティは、人生を見つめ直す一つの目安になることは間違いありません。
人生は起こる出来事とそれに対する選択の繰り返しです。ぜひ、シンクロニシティを人生に取り入れ、自分が納得のいく人生を送りましょう。